みなさん、こんにちは。
前回は、自筆証書遺言のうち、財産目録は手書きでなくても大丈夫になりました、というお話をしました。その自筆証書遺言について、もうひとつ重要なお話をします。
・自筆証書遺言の保管は、大丈夫?
自分が自筆証書遺言を書いたとして、考えてみましょう。自分が亡くなった後、その遺言を家族の、しかるべき人が見つけてくれるでしょうか?
あまり誰でも見られる場所に置いておくようなものでもないし、とりあえず引き出しに入れておこうか・・・
でも、葬式や遺品整理のどさくさに紛れて妻が知らずに捨ててしまうかもしれないな・・・
仏壇の中はどうかな?いや、そんな場所は滅多に開けないし、誰も気づかないかも知れない・・・
考えてみると、自分が亡くなった後、確実に見つけてくれる場所というのも、意外にないものですよね。だからといって、遺言書の場所を誰かに話しておくのも、ちょっと考えものです。特に、残される子供たちがいまいち仲良くない、といった事情がある場合、むしろ子供たちが破り捨てたり勝手に書き換えたり、といったこともあり得るわけで、どこに保管するかはとても難しい問題です。
・自筆証書遺言の保管制度の創設(新法制定)
このような、自筆証書の「紛失、偽造などのおそれ」について、これを解消する画期的な制度が設けられました。正確には「民法の改正」ではなくて、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という新しい法律の制定になります。この制度は、簡単にいいますと、法律の名称そのままですが、
自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる
というシステムです。法務局では遺言書の画像をデータ化して保存することになっていますので、震災や台風などの大規模災害で遺言書そのものがなくなっても内容は消えてなくなることはない、ということになります。
しかも、保管の申請、閲覧、返還の請求は、遺言者自身が法務局に出頭して行わなければならない、とされていますから、家族の人が勝手に内容を見たり、返してもらって破棄したりといったことはできません。家族の人が内容を知ることができるのは、相続が開始した後、ということになります。
・それでも気をつけなければならないことは?
自筆証書遺言については、前回お話したとおり財産目録の部分でかなり楽になり、しかも保管制度を利用すれば紛失、偽造などのおそれもなくなる、ということになります。このような改正、新法制定により、自筆証書遺言のデメリットのかなりの部分が解消されるといえるでしょう。
しかしながら、自筆証書遺言のデメリットである、内容の適正の確保については、今回の改正でも解消できていない点を忘れてはいけません。遺言を書くことの目的は、自分が亡くなった後、大切な家族や親族がもめないためですよね。その原点に戻れば、最終的には内容が法的に問題ないことが極めて重要です。今回の改正を機に「自筆証書遺言にチャレンジしよう!」とお考えの方も、内容部分だけでも専門家に確認してもらい、法的に間違いない内容を確保されることをお勧めします。
テーマ1、これから遺言書を書こうと考えている方へのお話は以上です。次回からはテーマ2、自分の死後残される妻が心配という方へ、という内容に入っていきます。