みなさん、こんにちは。

今回は、自分の死後、残される奥さん=配偶者について、相続の場面で保護が厚くなりました、というお話をします。

・自分が亡くなったら、妻のその後が心配・・・

旦那さんが一般的な寿命で先立つ場合を考えてみましょう。そのような場合、残される奥さんは、大抵の場合高齢です。70代、80代といったところでしょうか。お仕事をしている方もおられますが、まだまだ少数派でしょう。

一方で、子供の世代は40代、50代といったところで、独立して家族を持ち、会社でも管理職、まさに働き盛りということが多いでしょう。今回は、こういったよくある家族関係をイメージします。

旦那さんとしては、自分の死後を考えた場合、子供のことより、奥さんのことが心配なはずです。子供は、今や立派に成長し、自力で十分生活していける状況です。

一方で妻は高齢で、年金があるとはいえそれほど高額とはいえず、就職は勿論、起業して仕事をしていくこともほぼ困難です。

そこで、奥さんの家とお金、これを何とかしなければ、と考えられる方は、非常に多いです。こういった問題について今日は考えていきます。

・奥さんが家に住み続ける場合、問題点は?

旦那さんが亡くなった後で奥さんが家に住み続けたい、という場面を考えてみましょう。この場合、最もわかりやすく確実な方法として、遺産分割協議において奥さんが家の所有権を得る、という方法があります。

ただ、この方法には幾つか難点があります。そのうちのひとつを具体的に考えてみます。

家は不動産ですから、相当な価値になることが多いです。このため、家の所有権を奥さんが取ることにしてしまうと、それだけで相続財産のかなりの割合を奥さんがもらうことになる場合があります。

そのようなとき、子供たちが「お母さんにはお世話になったから、家もお金ももらってちょうだい!」などと言ってくれれば、何も問題はないでしょう。

しかしながら、必ずしもそういうあったかい家族ばかりとは限りません。「自分たちも、それなりにもらいたい!」などと主張されるケースも少なくないのです。

そういった場合、価値のバランスを考えた遺産分割を協議すれば、奥さんが価値の大きい家を取る以上、どうしても預貯金などは子供たちが多く取るという協議内容になりがちです。こうなってしまうと、奥さんは、「家はもらえたけど、老後のお金が心配・・・」ということになりかねません。

・「配偶者居住権」の創設(今回の改正)

以上のような問題を解決するため、相続法の改正において、「配偶者居住権」という権利が新たに創設されました。その内容は、

 所定の要件を満たした場合、その居宅の全部について、原則として終身、無償で使用収益=住むことができる権利

です。簡単にいいますと、奥さんとしては、所有権全部をもらうことなく、「死ぬまでタダで」住み続けることができる権利、の部分だけをもらう、という選択肢が新たにできたということになります。

どうも画期的な制度ができたようですね!そうなると、次に気になるのは、配偶者居住権について、もう少し詳しい内容を知りたい、実際どうやって使うの?ということでしょう。それについては、ポイントを絞って、次回以降でご説明していくことにします。