みなさん、こんにちは。

前回は、配偶者居住権というものが新たにできた、というお話をしました。今回は、そこから少し進んで、実際どういう権利なのか?どうやって使えばいいのか?といった具体的な内容に触れていきます。

・配偶者居住権は、放っておいても発生するのか?

旦那さんの立場からいえば、自分は何もしなくても、自分が亡くなれば自然に奥さんに配偶者居住権が発生するのか?それとも、何かしておかなければならないのか?率直に気になるところです。

結論から申し上げると、配偶者居住権は、当然には発生しません。旦那さんの立場であれば、「配偶者居住権を遺贈する」ということが必要とされています。

もう少し細かくみていきましょう。新設された条文をみると、

被相続人(この場合、旦那さん)が所有していた建物に、(この場合、奥さんが)相続開始時=旦那さんが亡くなったときに住んでいた場合で、①遺産分割で配偶者居住権を(この場合、奥さんが)取得するとされたとき、又は②配偶者居住権が遺贈の目的とされたときのいずれかの場合

とされています。

すなわち、旦那さんが何もせずに亡くなってしまった場合、残された奥さんと子供との間で、「配偶者居住権を奥さんのものとする」という内容の遺産分割がなされなければ、結局奥さんは配偶者居住権を手に入れることはできません。

奥さんと子供たちの仲が悪い、といった事情があるようでしたら、遺産分割が円満にまとまることは期待できないでしょう。そうなると、もうひとつのケースである「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」を満たすことが必要、ということになるのです。

ですから、配偶者居住権を奥さんに渡したい場合には、旦那さんとしては、「配偶者居住権を奥さんに遺贈する」旨を遺言書に書いておく必要があります。ここは重要なところですから、覚えておきましょう。

・配偶者居住権のポイント(登記ができます!)

配偶者居住権のポイントとしては、無償であること、終身であることについては既にお話しました。これら以外の重要なポイントとして、

登記ができる

ということについても、少し触れておきます。

登記がないと、第三者が登場したときに自分の権利を主張することが難しくなります。例えば、建物を無償で借りる場合には「使用貸借」といって登記ができません。

ですから、ある日突然建物の新所有者が現れて、「あなたが借りているとは全然知りませんでした。申し訳ありませんが、この家は私が譲り受けました。あなたに貸し続けることはできませんので、出て行っていただけますか?」などと言われてしまうと、無償の借主は、その新所有者に対し「いえ、私にはここを使い続ける権利があります」とは反論できない、ということです。

しかしながら、配偶者居住権は、無償であるにもかかわらず、登記ができることになっています。ですから、しっかり登記をしておけば、使用貸借と違って、建物が見知らぬ方に譲渡されても、依然として居住権を主張して住み続けることができる、ということです。これは「残された配偶者」に対する大きな配慮といえるでしょう。

配偶者居住権については、他にも細かいルールがありますが、基本編としてはこのあたりにしておきましょう。次回は配偶者短期居住権、という権利についての説明に入ります。配偶者居住権に「短期」とついただけですが、どう違うのか?共通点はないのか?など、基本的な内容について、ゆっくり解説していきます。