今回からは,交通事故の被害者側の知識ということではありませんが,
あらためて,ニュースや過去の事故事例から実感する「交通事故の責任」について,
お話をしてみたいと思います。

交通事故被害者・遺族の悲痛な思いについて

交通事故は,何よりも,

「ある日突然被害に巻き込まれる」
「何ら理由はなく被害者となってしまう」

ことに大きな特徴があります。

その意味で,「恨まれて刺された」とか,
「金銭トラブルで暴行を受けた・殺害された」といった
事例とは異なり,被害者の方の側からすれば,
「事実を受け止める」「納得する」ことが
なかなか難しいということが言えると思います。

実際に,現実に起こった交通事故の事例に触れてみると,
交通事故で,「被害者側に悲痛な思いを与える」ことの,責任の重さを痛感します。

突然,2歳の女の子の目の前で,母親が車にひかれて命を落としてしまった。
女の子と旦那さんは,大事な存在を急に失い,生活が一変してしまった。という事例。

 

年収1000万円以上も稼いでいた40代の働き盛りの自営業男性が,自動車を運転中,一時停止を無視して交差点に進入してきた車に衝突され,
記憶障害や脳の傷害を負ってしまった。その後は,ベッドからなかなか起きれなくなり,仕事もできず,ほぼ無収入の状態になってしまった。
という事例。

 

40代のキャリアウーマンの女性が,横断歩道を自転車で走行中,これを見落としたトラックが突っ込み女性を負傷させた。
女性は意識不明で病院に運ばれ,その後も脳の脊髄液減少等の症状により,治療を5年も継続することになった。
長く続いた治療のため,600万円ほどあった貯金も底をついてしまった。
今もなお「物事の整理ができない。会話が難しい。」等の苦しみを抱え,
生活保護を受給しながら,痛みやめまい等に苦しみながらの生活をいまだ強いられている。という事例。

 

40代の被害女性は地元でも有名な喫茶店を家族で切り盛りしていたが,
自宅兼店舗を出てすぐのところで、近くの店舗の駐車場からバックしてきた車に衝突され,車の下敷きになってしまった。
その結果,不幸にも亡くなってしまい,その事故の様子を遺族が目撃してしまった。という事例

どの事例も,「なぜこんなことに巻き込まれなければならなかったのか」と到底納得のいくものではありません。
特に,不幸にも交通事故で命を落とされてしまった事例に関しては,被害者の遺族の方の叫びは,
どれだけ辛くて悔しいものか,筆舌しがたいものであることを,改めて皆さんに知っていただきたいです。

「今まで普通にそこに居た自分の家族が、今居ないという現実」

その事実に立ち向かうこと自体,とても耐えがたく難しいことです。

事故の現場を見るたびに,亡くなった大事な方の無念さを思い,
事故の際の惨劇を思い出してしまう。毎日,「戻ってきてほしい」という気持ちが
どうしてもわいてきてしまう。

このような辛い気持ちをずっと抱えて生きている方が今もたくさんいるのです。

何よりも,このような状況を作出した「加害者」には,
この気持ちを分かってほしい,痛感するべきだと,強く思います。

実際に加害者になった方ではなくとも,車を運転する側の方々には,

もし事故を起こしたら,自分もこのような悲痛な思いを人にさせてしまうかもしれない

このことをぜひ知っておいていただきたいです。

一瞬の気のゆるみが,ある人の人生を一気に「苦痛の毎日」に変えてしまう,
ときには命を奪い,その家族の人生も一気に狂わせてしまう,

これが,交通事故というものです。

普段運転していると,他人事のように思えるかもしれませんが,
気の緩みは誰にでも起こることであり,決して皆さんにも他人事ではありません。

運転の際には,常に,こういった交通事故被害者の方々の悲痛な叫びを思い出していただければと思います。