離婚の際に考えなければならないこと

「離婚」の二文字がちらついた時、もう「何が何でも別れたい」と離婚を急ぎがちですが、決して慌ててはいけません。ここは、あえて冷静になって、これから考えなければならないことをまとめましょう。離婚を考える際には、

●どのような手続きで離婚するか
●慰謝料、財産分野、年金分割などのお金の取り決めをどうするか
●親権、養育費、面会交流など子供のこと
●戸籍、氏、保険等の手続き

といった様々な事を取り決めればなりません。
どの項目も、今後の将来に大きく関わる大事な項目ですので、しっかりと熟考して、取り決めていくことが大事です。

離婚の手続きはどうする?

離婚の手続きには、

・2人で話し合って離婚届を提出する協議離婚
・家庭裁判所の話し合いによって離婚を成立させる調停離婚
・裁判所の判断により、裁判によって離婚をする裁判離婚
・裁判中に和解によって離婚を成立させる和解離婚

といった手続きがあります。

協議離婚の場合でも、

・公証役場で公正証書を作成すべきかどうか
・話し合いに弁護士を仲介させるか
・別居しながら話し合いを進めるべきか

等によって、手続きにも若干の違いが出てきます。

どのような手続きで離婚したかによって、戸籍上の記載や、法的な効力も異なってくるので、どのような手続きで離婚するかもとても重要な項目です。

慰謝料はどうする?

離婚の際の「慰謝料」と言うと、「浮気をされた場合に支払われる慰謝料」をイメージされる方が少なくありません。しかしながら、離婚の慰謝料はこれに限られず、およそ

離婚に至る原因を作った側が、相手に対して支払うべきもの

とされています。これ以外にも、婚姻期間中の暴力行為や、不倫、性交拒否等に対して慰謝料が支払われる場合もあります。
一括で払ってもらうのか、分割で払ってもらうのかとの細かな取り決めをする場合もあります。

財産分与はどうする?

財産分与は、

夫婦が婚姻期間中に築き上げた2人の共有財産を、離婚の際に2つに分けること

をいいます。これは、預金口座等の名義にかかわらず、実質的に2人の共有財産かどうかによって判断されます。

現金や預金をもちろん、株などの有価証券、退職金等も財産分与の対象となる可能性が出てきますので、財産分与の対象財産はしっかりと吟味することが重要です。

親権はどっちにする?

日本の法律では、離婚をした際には、夫婦の一方が子供の親権者となることが決められていますので、離婚の際はどちらが親権をもらうかについて壮絶な争いになることが少なくありません。通常は、親権者となった側が、子供をそばにおいて育てていくので、夫婦のどちらともが「子供を手放したくない」と言った場合には、家庭裁判所の判断によって、親権者を取り決める場合も出てきます。

どちらが親権者としてふさわしいかについては、

・これまでの監護状況
・養育環境や監護能力
・子供の意思
・母性優先,きょうだい不分離その他の事情

など、様々な要素が考慮されますが、親権を獲得したい場合には、これらの主張をしっかりと行っていくことが重要です。

養育費の取り決めはどうする?

夫婦が離婚しても、親であることは変わりがないので、親権者とならなかった側は、子供を育てるための費用として、養育費を支払わねばなりません。日本では、養育費の支払い率は20%程度と言われておりますので、まだまだ支払い率が低いのが現状です。
法的には、当然支払われるべきものなので、将来にわたって、養育費の支払いが滞らないような手立てをしておくことが大事です。

具体的には、

・将来支払いが滞った場合に給与差押え等ができるようにしておく
・そのために、公正証書や調停調書などの「執行力のある書面」を作成しておく

といった手続きが必要となってきます。

面会交流はどうやって決める?

同様に、夫婦が離婚しても、親であることには変わりませんので、日時や場所を決めて、子供と離れた親が子供に会うことができるようにしておくものが面会交流(面接交渉ともいいます。)です。これも、面会交流の日時、場所、方法について、事前にどこまで取り決めておくかによって、法的な効力が変わってきますので、取り決めるべき内容については、しっかり吟味することが重要です。

年金分割の手続きはどうする?

最近はよく聞かれるようになりましたが、

将来の年金を夫婦間で調整する年金分割という制度

は、平成19年から開始されており、この手続きを利用する方も増えているようです。

自営業の方は、厚生年金に加入していないので年金分割の対象とはなりませんが、厚生年金を支払っている場合には、妻と夫との支払った厚生年金につき、婚姻期間に応じて平等に分け合おうということで、年金分割の対象となります。具体的には、報酬比例部分といって、「お給料に応じて変動する厚生年金保険料」について、将来受け取るべき年金については、婚姻期間に応じて2分の1に分けることになります。

手続きは、基本的に「2分の1にしましょう」と合意ができれば、書面作成や年金事務所の手続き自体は難しいものではありません。共働きであっても、奥さんの給料より旦那様の給料が高いようであれば、年金分割をするとその分、旦那さんの年金から奥さんの年金のほうにスライドされるような形になるので、このような場合、奥様のほうは、年金分割の手続きはしっかりとっておいたほうがいいことになります。

戸籍や氏などのこと

これは離婚が成立した後の話ですが、

・ご自身の戸籍をどうすべきなのか
・子の戸籍をどうするか
・名字を変えるか変えないか

などについても、結構複雑な話が出てきます。

これ以外にも、健康保険の加入は子供をどちらに入れるかなど、細かな手続きが色々と関わってきます。名字の決定に関しては、離婚成立後3ヶ月以内に決めないと、手続きが煩雑になってきますので、これも事前にしっかり決めておくべきでしょう。

まとめ~離婚は後悔しないように~

このように、離婚をするということは、幅広く複雑な法的な事柄を、ひとつひとつ決めていかねばならないことが必須となります。どの項目も、非常に重要な項目なので、一つ一つ吟味して、しっかりと後悔しないように取り決めることが重要です。とはいえ、悩んでいる間に、2~ 3年などあっという間・・・ということもありますので、悩み始めたら早いうちに、弁護士に相談してくださいね。各項目につき、取り決めるべき道筋が見えるだけでも、きっと気持ちが楽になってもらえると思いますよ。