財産分与の対象となる財産は具体的にどんなもの?

財産分与と聞くと,大半の方が,預金やマイホームをどう分けるかについてイメージするようです。ただ,財産分与というのは,夫婦の間で築いてきた財産の全てを分けることになりますので,その対象財産は極めて広い範囲に渡ります。

例えば,家にある現金はもちろん,

・家財道具
・家電
・絵画

といった財物も,基本的には財産分分与の対象となります。また,財産と把握できるものとして,

・株式等の有価証券
・投資している財産
・人にお金を貸している場合の返せと言う権利
・長年積み立ててきた保険の解約返戻金

等も,全て財産分与の対象となります。このように,財産分与の対象となる財産をしっかり把握することが財産分与の取り決めの上で最も重要です。

また,忘れてはならないのは,数年後に支払われるであろう

「会社からの退職金」

です。将来ほぼ確実に支給されるであろう退職金であれば,これも財産分与の対象となると考えられています。会社に勤めていられたのは,配偶者の支えがあったとからこそ,と考えられるため,これに基づく退職金も,婚姻期間に応じて財産分与の対象となるわけです。

預金や現金を財産分与するには?

預金や現金については,

「婚姻期間中に,夫婦間で蓄えた。」

と把握できるものについては,離婚時に原則として2分の1に分けることになります。
預金については,当然ですが,銀行の口座名義にかかわらず,実質的に夫婦間で貯めたものかどうかという判断がなされます。通常は,婚姻期間中に作った口座の預金は,原則として財産分与の対象となるでしょう。

一方で,結婚前から作っていた口座で,その後,出し入れが全くないような口座は,特有財産として財産分与の対象とならないのが原則です。結婚前から保有している口座で,結婚後も出し入れが頻繁にあるような場合は,どこまでが個人の財産なのか,争いになりやすいといえるでしょう。

預金について,

「別居や離婚の時に調べてみたら,あまりにも金額が少なかった」

というようなケースもあり,その場合には,

「離婚に備えて相手方がこっそり現金で隠していないか?」

という疑いが生じます。預金がどこかに隠されている可能性がある場合には,過去の通帳履歴をさかのぼって,勝手に現金が引き出されていないかなども調べる必要があります。

そもそも口座自体が分からないケース,つまり,

「預金口座をこっそり作って,そこにお金を蓄えている」

というケースも少なくありません。これが疑われる場合には,弁護士の権限にはなりますが,銀行に照会をかけて,口座の有無を調べる等の手続きが必要になる場合もあります。いずれにせよ,離婚前に,しっかりと相手の預金口座を把握しておくことが極めて重要です。

現金については,「家の金庫に100万円あります。」という分かりやすいケースであれば良いですが,たいていは「ヘソクリとして隠している」など,把握しづらいこともあるかもしれません。日ごろから,可能であれば,夫や妻のヘソクリについても,探しておくのが良いでしょう。もちろんヘソクリについても財産分与の対象となります。
このように,現金についても,どこにいくらあるのかについては可能な限り把握しておきましょう。

保険や株等の扱いはどうなる?

財産分与の対象として,うっかり忘れがちなのが,生命保険や株といった,日頃手元に財産として把握していないものです。現金や預金のように,すぐに使える財産ではないので,うっかり忘れがちになっているようです。

生命保険

については,完全な掛け捨てのものであれば,特段価値があるという判断にはなりませんが,今解約すると解約返戻金が返ってくるような保険であれば,その保険自体に財産的価値があると考えられます。したがって,これも財産分与の対象となります。長年,保険に加入している場合には,数百万円の解約返戻金が戻ってくるケースも少なくありません。

保険を財産分与する方法として,ひとつには,解約してしまって解約返戻金を半分に分けるケースもあります。ただ,そうするとこれまでかけてきた保険がもったいないということで,保険はそのまま維持して,その保険の権利を夫婦の一方が引き継ぐことを前提に,解約返戻金相当額の半分を離婚時に相手に渡す,という方法も多くとられます。返戻金の金額,保険維持の希望の有無,清算金を支払う資金の有無等によって,処理を考えていく必要があります。

株式(1株当たりの金額×持ち株数)

についても,それ自体に財産的価値がありますので,今売却すればいくらになるといった計算方法に基づいて,その半分を財産分与として請求することができます。もちろんこれも,結婚前に既に持っていた株式などは財産分与の対象にならないほか,株式の価値をいつを基準に計算するかなど,難しい問題も含まれてきます。考え方によって金額が大きく変わりうる分野ではありますので,そこは注意が必要です。

財産分与は,そもそも「分けるべき財産」を選別するだけでも大変ですので,しっかりと全て把握することが大事と言えるでしょう。