交通事故が発生した場合の過失割合については、納得がいかない!!と気持ち的に解決ができないほか、法的にも過失割合が少し変わるだけで、示談金に大きな影響が出ますので注意が必要です。

過失割合は妥当?

保険会社から、

今回の過失割合は80対20です

などと言われるケースがあります。
信号待ち停車中に、後ろから追突されたと言うことであれば、通常は過失割合は100対0です。しかしながら、車対車の事故で、両方とも動いていたということであれば、通常は被害者側にも過失割合がついてしまうことがほとんどです。

大切なのは、過失割合がどのように決まるのかを、しっかり知っておくことです。
90対10の過失割合が法的に妥当とされる交通事故のような場合は、

自分は全く悪くないのに、過失割合が10%もつくのが納得いかない

と思われることも多いと思います。ただし、この過失割合に納得がいかないということであれば、最終的に裁判所の判断を仰ぐ必要が出てきます。過失割合が争いになるケースは、

必ずしも裁判に行ったほうが有利ともいえない
=裁判所の判断を仰いでも納得のいく過失割合にならない

可能性があるので、妥当な過失割合をしっかり話し合いの段階で決定できることが望ましいと言えるでしょう。

交通事故の過失割合については、「どのような態様で起きた事故か」という事故態様の類型別に、これまでの裁判例を集積してまとめた「判例タイムズ」という書籍が非常に参考となります。裁判所や弁護士、保険会社も通常は、この書籍を基準として過失割合を判断しています。

例えば

四輪自動車と四輪自動車の事故で、
信号のある交差点で、
右折車対向車と直進車との衝突事故

ということであれば、

過失割合は20対80

と定められています。
弁護士も保険会社も、基本的にはこの判例タイムズの該当箇所を見れば、「この事故の過失割合はこのぐらいだろう」と見通しをつけることが可能であり、これを基に過失割合の話し合いも進めていきます。
注意が必要なのは、修正要素というところで、例えば

・被害者(歩行者)が高齢者であれば、過失割合を被害者側に5%有利に修正する
・右折車が徐行をしなかった場合は、過失割合を被害者側に10%有利に修正する

といった修正要素についても、判例タイムズに細かく載っています。
過失割合が5%動くだけでも、数10万円が変わってくるような世界なので、過失割合については、しっかりとこちらに有利な主張を尽くすに越した事はありません。

物損車の修理費で過失が20と言われたけれど?!

交通事故で怪我をされた場合には、通常は先に「車の修理費等のお話し合い」が進められます。修理費の負担について、金額がまとまれば、「修理代等として保険会社がいくら支払う」という取り決めをすることになります。これを「物損の示談」といいます。
物損の示談をする際には、

最終的な修理費等の金額から、
もしこちらにも過失があるのであれば、
その部分を過失割合に応じて減額される

ことになります。これを「過失相殺」といいます。

物損の示談の際に、口頭もしくは書面で、

あなたの過失部分は20%です

などと伝えられることになります。この時気をつけなければいけないのは、

物損の金額がとても低いからと言って、過失割合を適当に取り決めてはいけない

ということです。
物損の際に取り決めた過失割合が、必ずしもお怪我の示談部分=「人損の示談」に直接適用されるわけでは無いのですが、事実上保険会社は、人損の示談の時に、

物損の時に過失割合が20対80だったから

と言って、物損の時に取り決めた過失割合をなかなか譲ってくれません。
なので、基本的には物損の際に取り決めた過失割合が、人損の示談まで原則として引き継がれるイメージでいていただくと良いと思います。
いずれにせよ、物損の話し合いの際に過失の話が出た場合には、

過失割合が妥当かどうかをしっかりと吟味する必要がある

といえます。

事故の目撃者がいない場合はどうする?

どのような形で交通事故が起こったのか、これを「事故態様」・「事故状況」などといますが、事故の態様がどうだったのかについては、過失割合に大きな影響与えます。

間近に目撃者がいて、事故の一部始終を見ているということであれば、
その目撃者に証言してもらうのが有力な証拠になる

といえます。
この意味では、事故の態様に争いが出そうな場合には、事故直後に目撃者の方の連絡先などを聞いておくことが良いと言えるでしょう。

とはいえ、通常は、事故直後は、焦ったり慌てたりしていて、冷静に目撃者の連絡先を聞いている余裕などないことが多いと思います。また、そもそも人通りの少ない夜間での事故などでは、目撃者自体が存在しないことが少なくありません。

事故が起きた場合に、自分に有利な主張をしたいのは皆同じですから、少なからず、自分に有利なように、事故態様をごまかすケースが少なくありません。それどころか、

明らかに向こうからぶつかってきたのに、
逆にそっちがぶつかってきたんだなどと言われた

と、いわゆる罪のなすりつけさえ、行われることも少なくないようです。

そのような場合でも泣き寝入りせず、しっかりと事故状況を説明し、場合によっては証拠によって裏付けていくことが重要となります。目撃者がいなくとも、警察を呼んでその場で事故の状況を細かく説明することによって(これを実況見分といいます。)、実況見分調書を作成することができますので、これを証拠とすることができます。また、相手が適当なことを言ってきても、実際に車の破損状況や破損箇所などを見れば、事故がどのような対応で起きたか、ある程度推測することができます。道路に残ったブレーキ痕等も証拠となりますので、警察の実況見分の際に、しっかり見て記載してもらうことが重要です。

最近はドライブレコーダーがついているケースもそこそこ出てきましたので、相手方が自分に不利なドライブレコーダーの内容を隠すようなことがあれば、ドライブレコーダーをしっかり提出してもらうことも重要と言えるでしょう。
客観的な証拠によって証明ができなくても、事故の状況を詳細に陳述書と言う形で書面化すれば、これを証拠とすることも可能ですので、過失割合で争いになった場合は、ぜひ弁護士を頼ってくださいね。