慰謝料とは

交通事故でお怪我をされた場合には,治療が終わった後に保険会社から慰謝料というものが支払われることになります。

この慰謝料というのは,法的には,

ある人の違法行為によって精神的に傷つけられた,辛い思いをしたことに対する
精神的苦痛を慰謝するための賠償金

という位置づけになります。

慰謝料は,「どれだけつらい思いをしたか」によって金額が変わるということになりますが,この慰謝料の金額がいくらであるべきかについては,
本来的にはなかなか難しい問題です。

例えば,不倫をされた,名誉を毀損されたような場合に,

どれだけ辛い思いをしたかというのは, いわば人それぞれであって,
それを金額で一律に決定することは困難

と言わざるを得ません。

とはいえ,実際にこの事案で慰謝料はいくらになるべきかについて,

法的には決定せざるを得ないので,それなりの基準は必要

といえます。

交通事故の慰謝料の基準

ここで交通事故で怪我をされた場合の慰謝料というのは,

どのようなお怪我でどのくらいの期間病院に入院・通院したかによって
法的にはある程度,類型化が可能

と考えられています。

痛みに強い,弱いといったところは人それぞれだと思いますが
「基本的にはこのようなお怪我でこのぐらい通院するのであれば
これだけしんどい思いをしただろう」ということは計算可能というわけです。

具体的には,交通事故の怪我の慰謝料に関しては,別表Ⅰ・別表Ⅱという表があり,

重症事案の場合は別表Ⅰ,
むち打ち症などの比較的軽度な症状の場合は別表Ⅱ,

といった形で,慰謝料の計算方法を示した表が用いられています。この表の中身は,次のように,基本的には,入院や通院をした期間と日数を基礎に,慰謝料をいくらにすべきか計算することになっています。

別表Ⅰ・別表Ⅱの使い方

交通事故の被害に遭われた方は,この別表Ⅰ・別表Ⅱの表を見て,自分の怪我の内容は,どちらの表を用いるべきかまず判断します。そして, ご自身の入院期間を横軸で,通院期間を たて軸で見て行きます。例えば,

軽度のむち打ち症のケースで,別表Ⅱを用いるケースにおいて,
入院はなく,通院だけで8ヶ月間通われた方は
たて軸の8月の部分を見てもらって,慰謝料は103万円が基準

となります。

骨折などの重症のケースで別表Ⅰを用いる場合は,
例えば入院3ヶ月とその後通院を3ヶ月した場合,
入院3月と通院3月が交差する188万円が慰謝料の基準

となります。細かくなりますが,単純な1月単位で計算ができない場合は,1ヶ月 分の慰謝料を30日で割って調整する方法を取ります。このように,

別表Ⅰと 別表Ⅱを用いれば,
交通事故の被害に遭われたあなたの慰謝料が,
法的にはいくらが妥当なのかを把握することができる

ということになります。

裁判や保険会社との交渉の実際

この表は,基本的には,裁判を起こした場合に,症状固定といって,

「 これ以上治療を続けても良くも悪くもならなそうなので
この段階で治療はストップしましょう」

と判断されるその時点までの入通院の期間・日数を基礎に,裁判所が認めるであろう金額として把握されます。

なので,「実際に通院した期間と裁判所が認定する症状固定までの期間がずれる」ような場合は,実際の通院期間分の慰謝料が全額認められない可能性もあるので,そこは注意が必要です。

ただ,通常は,

症状固定の判断は,医師の判断が尊重される

ので,医師の指示に従って通院しているのであれば,基本的にはそれまでの通院期間に応じた慰謝料が認められるべきと考えられます。このように,

症状固定がいつと判断されるべきかについては,
慰謝料の計算においては非常に重要となり,
保険会社との交渉においても,その点における交渉力が非常に重要

ということになります。

保険会社が提示してくる慰謝料の金額は,

多くても2/3程度,少ない場合は半分以下になるケースも少なくありません

ので,受け取る示談金の金額が,数十万単位で変わってくる可能性があります。この表を見て, 自分の慰謝料が少ないのでは?と思われる方は,示談を急がず,弁護士に相談するようにしてくださいね。