前回は,交通事故の刑事責任についてお話をしてきました。ここで,改めて,交通事故の悲劇をなくすために,
ドライバーの皆さんに考えていただきたい「運転・交通心理」についてお話をしていきたいと思います。
●自動車を運転する際の交通心理・安全運転について
改めて,車を運転する際には
「注意しても注意しすぎということはない」
ということを,交通事故の各事例に触れるたびに痛感いたします。
避けられる事故・避けられない事故?
世の中に起こる事故には,
①避けられない事故
②避けようと思えば避けられる事故
③起こるべくして起こる事故
など,運転者の心理・状態によって様々です。たとえば,
- 追突事例
- 急な飛び出し
- センターラインオーバー
- 逆走
などについては,予想もしない相手車の運転による事故なので,避けようがないと言えるかもしれません。
一方,
- スマホをいじったことによる事故
- うっかり見逃しによる事故
- 居眠り運転
- 疲労中の事故
等については,本来避けられるはずだった事故です。
- 急に右折をしてきた車とぶつかった
- 信号無視で直進してきた車とぶつかった
- いきなり割り込みをされてぶつかった
といった事故については相手方が悪いとは言えども,避けようと思えば避けられた事故の部類に入るでしょう。
絶対に事故を起こさないという強い気持ち
避けられるはずの事故は,「絶対に起こしてはいけない」
ですし,
避けようと思えば避けられた事故についても
被害者側に一定の過失割合が就くのが通常ですし,
「避けられたに越したことはない」
と言えるでしょう。
避けようと思えば避けられる事故について,
これを防止するには何より「ドライバーの心理が一番大事」です。
「絶対に事故を起こさない。どんな状況になっても絶対に事故は避ける。」
というドライバーの意識の強さがそのまま事故の発生率に直結するものと実感しています。
運転するときの心理は,「あり得ないことが起こるかもしれない」という意識がとても重要で,「大丈夫だろう」は絶対に禁物です。
被害者や遺族の声を聴くたびに,ドライバーの方々には,
「自分の家族が被害者になったら」
「自分が加害者になったら」
という当事者意識がとても大事だと痛感します。
自分の家族が,自分が,という意識で運転すれば,
「あり得ないことであっても起こってはいけない」という気持ちになれるはずで,
「注意は払いすぎてもよいくらい」の心持ちで,運転ができると思います。
このような運転心理を皆さんが持っていけば,耐え難いつらすぎる交通事故は大幅に減るのだろうと思っています。
●最後に
交通事故の被害者の方は,何も落ち度なく,
理由なく身体や生命を奪われる
ことになります。
病気のようなケースと違い,それは突然やってきて生活や人生を一変してしまうことになります。
そのような事態を引き起こす危険のあるいわば凶器ともなりうるのが,皆さんが日頃運転しているまさに車なわけです。
車は,本来は皆さんの役に立つ,生活を支える大事なものですから,これを凶器にしてはいけない,という意識で毎日の運転に臨んでほしいと思います。
ドライバーの皆さん一人一人の気持ち,
一つ一つの注意や取り組みが,交通事故減少に必ずつながる
と思いますので,ぜひ今一度,「運転心理」を見直してみてくださいね。