引きつづき,財産分与について,少し詳しく見ていってみましょう。
数年後に支給される退職金の扱いは?
退職金について,ご本人同士で話し合いをすると,財産分与から漏れてしまうことも少なくないようです。例えば,
夫が会社から受け取る退職金
についても,財産分与の対象となると考えられています。会社で実際に働いているのは夫の方ですが,妻はお弁当を作ったり,家で食事を作って待っていたり,家事を行ったりと,夫が会社に勤続けられるよう支えている側面があるわけです。そういった理由から,夫が受け取る退職金についても,「妻の寄与があってこそ」という考え方から,妻に財産分与を主張する権利があると考えられています。
熟年離婚で,すでに退職金が支払われているようなケースであれば,それを分ければいいので話は簡単です。婚姻期間と勤続期間の割合に応じて,退職金の2分の1を原則に分与することになります。
将来受け取るべき退職金
については,やや話が厄介になってきます。将来受け取る可能性はあっても,現在はまだ支給されていないので,これをどのように分けるか,そもそも財産分与の対象とすべきかは問題となってきます。
計算方法としては,今退職したら退職金はいくらになるという計算方法に基づいて,勤続期間と婚姻期間の割合により,その2分の1を請求することになります。ただ,将来支給が不確定な場合等は,財産分与の対象から外される可能性もあります。
例えば,今退職したら退職金が1000万円となり,将来的にもほぼ確実に退職金が支払われるであろう場合,
夫の勤続年数が20年間
結婚している期間が10年間
だった場合は,
1000万円× 10年/20年× 2分の1 =250万円
を財産分与として請求することができます。実際問題として,現在においては退職金が支払われていないため,現金での支払いが難しいという場合もあります。その場合は,将来に退職金が支給された場合に支払えというように条件をつける場合もあります。
不動産はどうやって分けるの?
不動産についても,
婚姻期間中に夫婦で築いた財産
と把握されるものは,財産分与の対象となります。真っ先に思いつくのは,結婚の際や結婚後に購入したマイホームですが,これをどう分けるかは非常に難しい問題となります。
ローンを完済している場合には,今あるその不動産の価値を2つに分けるべきことになります。その場合,離婚後にマイホームを2人の共有状態にしておくことは好ましくありませんので,通常は一方が引き取ってその価格の半分を代わりに金銭で支払うといった解決をすることが多いです。
2人とも不動産を欲しくない,といった場合には,その不動産を売却してしまってその売却益を2人で分けるという方法もとれます。いずれにせよ,ローンが残っていない場合には,さほど困難な問題は残りません。
話が難しくなるのは,マイホームにまだローンが残っている場合です。考え方としては,
「今売ったらいくらになるか」
という計算方法に基づいて,その利益を半分で分けることになります。実際に売却してしまえばわかりやすいですが,一方が家を引き取る場合には,今後のローンの負担をどのようにしていくか,離婚時に精算金としていくら支払うべきか,等が非常に難しい問題となります。購入時に頭金として,一方の両親が資金を出していたような場合も,大きな争点の一つとなります。このあたりは,裁判でも分かれているところなので詳しくは弁護士にご相談ください。
オーバーローンといって,今売ってもローンだけが残るといった場合の不動産の分与方法も,いろいろ方法がありますので,ここも詳しくは弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
その他家財道具等はどうやって分けたらいい?借金やローンも2人で分けるの?
婚姻期間中に購入した以下のような家具・家電
テーブルセット
テレビ
冷蔵庫
なども,基本的には財産分与の対象となります。
ただし,その一つ一つの価値を算出した場合に,価値が極めて高額になることが通常はあまりありませんので,特に持ち出しを希望するものと,権利を放棄するものとを分別すれば,話し合いがまとまることも多いです。
ただし,高級な家具・絵画や,大事にしているペットなど,お互いが権利主張して壮絶な争いになることもございます。その際は,どう分与するのが最善の方法なのか,うまく話し合いを進める必要が出てきます。このあたりも,話し合いがどうしてもまとまらない場合は,最終的には裁判にて決着をつけねばなりません。
借金やローン
についても,夫婦で半分に分けると誤解されている方が多いようです。
基本的には,借金やローン等は,たとえ夫婦であっても,個人の契約となりますので,離婚時に夫婦で2つに分けるということは原則としてありません。
ただ,原則はこの通りなのですが,例外として,日常家事債務といって,夫婦の共同生活のために背負った債務については,連帯して責任を負うケースがあります。不安な場合はこの点も弁護士にご相談ください。